@対人関係や精神発達に関して
・この時期の子どもはお母さんが側にいれば、母親から離れていても友達と遊ぶことができます。ふつう友達に興味を示し遊びたがりますが、まだ自己中心的で、ともだちとおもちゃや本を取り合ったりすることもあります。
・また困ったことがあればお母さんに助けを求めようとします。おもちゃで見立て遊びや、ごっこ遊びをしたり、「前後、左右、上下、大小、色の区別」などができ、はさみを使い、まねて○を描くことも出来るようになり、積み木を積むこともできます。
・このようなことが出来る場合には、3歳としての精神発達や微細運動機能は正常と考えることができます。
・これに対し母親から離れられない・友達と遊べない場合は、心理相談を受けてみるのが良いかと思います。
・他の子どもがいても無関心で多動的な場合や人に甘えない場合、積み木が積めないような場合には、養育環境をよく確認し心理相談や精神発達相談を受けてみましょう。
A 自我の芽生えについて
・通常この時期の子どもは、手伝ったりすると怒り自分でやりたがったり、反抗心がでてきます。
・全てをイヤと言ったり自分が無視されると怒る場合、逆に自分で全くやろうとせず無気力だったり、母親の顔色ばかり気にするような場合には、養育環境に問題がなかったかよく考え育児相談や精神発達相談を受けてみましょう。
B 言葉の発達に関して
・言葉の発達には、精神発達、聴力、養育環境が関連します。通常3語文の会話が出来、名前や年齢を聞くと答えることが出来ます。2語文しか話せなくても、周りの大人の会話の内容を理解できれば問題はありません。精神運動発達が正常で表情があかるければ、単語を話す程度でも余り心配はいらないでしょう。
・ただし以下の様な場合は専門的な検査を受けてみましょう。
※2語文が話せず話す言葉の意味が不明である場合は聴覚検査を受けましょう。
※言葉がないか単語のみで聴覚異常がない場合、心理相談を受けてみましょう。
※言葉がなく音に反応しない場合、聴覚検査を受けましょう。
※言語の理解は悪くないが発音障害がある場合は聴覚検査を受けましょう。
※話しかけにオウム返しで答える場合、心理相談を受けましょう。
※周囲に関心が鈍く言葉が遅い場合、精神発達相談を受けましょう。
C 指しゃぶりについての育児相談
・指しゃぶりは成長発達過程で現れる生理的行為で、幼児期の指しゃぶりは不安・緊張解消の代償行為で、子どもの心に何らかの抑圧の存在を示唆する異常シグナルと言われています。赤ちゃんの健全な成長を阻害する心理的ストレスや生活環境がないのか確認してみましょう。
・指しゃぶりの頻度は1歳から3歳児では20%程度、4歳以降は減少していきます。長期間の指しゃぶりの弊害は、咬合不全や構音障害(サ行、タ行、ナ行、ラ行が舌足らずな発音)に繋がります。
・1歳までの乳児期の指しゃぶりは、成長発達過程の生理的な行為なので経過観察でよいでしょう。
・1歳から2歳までの幼児期前半では屋外で遊ぶようになると自然に指しゃぶりは少なくなりますが、退屈な時や眠たい時に認められるので見守っていてよいでしょう。しかしひどい指しゃぶりの場合は、習慣化防止のため医師や臨床心理士に相談しましょう。基本的には3歳頃までは指しゃぶりを強く禁止する必要性はないでしょう。
・3歳から6歳までの幼児期後半までに習慣化した頑固な指しゃぶりも、通園生活が始まったりすると自然に消失することが多いです。しかし頻繁な指しゃぶりが持続する場合は、医師や臨床心理士に相談してみましょう。
・就学後は殆ど認めなくなりますが、この時期になっても指しゃぶりをやめることが出来ない場合は、医師に相談しましょう。
・子どもの生活のリズムを整え、外遊びや運動、手や口を使う機会を増やすように心がけましょう。スキンシップを図るため、就寝前などに子どもが満足するまで絵本を何度も繰り返し読んであげることも大切です。
・十分な愛情が注がれた生活や育児環境があるのかどうか、一度考え直してみましょう。また屋外での遊びの時間が十分確保されているのか、友達との遊びがうまくできているのかどうかなど、子どもの生活リズムに問題がないかどうかも確認してみましょう。
D 「おしゃぶり」についての育児指導
・米国では、おしゃぶりが赤ちゃんの吸啜本能を満たし、精神安定効果(むずかる気持が落ちつき泣き止む)があり、母親の育児ストレスの軽減と指しゃぶり防止効果があり、更に就寝時におしゃぶりを使用すると覚醒閾値を下げるため乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク軽減にも有効と発表しおしゃぶり容認する意見が強いです(米国の小児保健発育研究所)、但しWHO/UNICEFは反対しています。
・日本では、おしゃぶりを使用すると、本来おしゃぶりを止めるべき生後2〜4ヶ月の時期に習慣化してしまい「おしゃぶり」を止めれなくなり、長期使用の弊害で噛み合わせの異常や育児面へのマイナス効果(言葉かけが減りあやさなくなり、母子間の愛着形成や発語にマイナス)が大きくなるという考え方であり、反対する意見が多いようです。
・「おしゃぶり」についての日本小児科学会と日本小児歯科学会の合同見解(平成17年1月)を発表しました。その内容は:
※異常咬合防止の観点から出来るだけ使用しないほうがよい
※発語・言葉を覚える1歳頃までに常用するのを中止し、遅くとも2歳半頃までにはおしゃぶり卒業
※子育てを手抜きするための手段としておしゃぶりを使用することは止めましょう
※4〜5歳になっても中止できない場合は、心理的問題がないか受診し相談しましょう。
E トイレットトレーニングについての育児相談
・排尿は膀胱に尿がたまると膀胱内面にある神経受容器が作動して、脊髄神経を経てその刺激情報を延髄に伝えます。
・延髄は反射的に排尿させる中枢で、神経機能が未熟な乳児期早期では、膀胱に尿がたまると延髄の中枢作用により反射的に排尿がおきます。
・しかし月齢が進み乳児期後半になると反射的な排尿に抑制機能が働くようになり、膀胱に貯まる尿量も増えるため膀胱に尿が貯まったという情報は自立歩行を開始する1歳前後で延髄から更に高位の大脳皮質にまで伝達されるようになり、初めてこどもは「おしっこをしたいという尿意」を言葉で表現できるようになります。
・尿意を自覚し意識的に我慢しトイレやオマルで排尿できるようになって、初めてトイレットトレーニングを始めることができるようになります。
・無意識でおむつに排尿していた状態から尿意を感じ、自分でオマルやトイレで排尿することができるようにトレーニングすることが、トイレット・トレーニングであります。
●ステップ1(準備段階:排尿感覚を知る)
一人歩きが出来るようになり言葉も幾つか話せるようになると大脳皮質の機能も発達しますので尿意を感じることができるようになります。排尿の間隔をよく観察して、排尿間隔が2時間以上あくようになれば膀胱へ尿をためることができるようになっています。オマルやトイレを使うことができるようになります。
●ステップ2(オマル・トイレへの誘導、最初は偶然排尿)
・排尿して2時間くらいたち膀胱に尿が貯まっている頃を見計らってトイレやオマルに連れて行き坐らせ、「シーシー」と排尿を促すとタイミングが旨くあっていれば排尿しますが、最初は偶然の場合が多く、うまくいく場合もあれば、うまくいかない場合もあります。
・トイレへ連れていくタイミングとして相応しいのは、起床後や昼寝の後、散歩の前やおやつの前、入浴前などにためしてみるのがよく、子どもが遊びやテレビなどに夢中になっている場合には、トレーニングに相応しくなります。
・排尿を促し偶然おしっこがでた時に「うまくシーがでたね。えらかったね」と褒めてあげ、子どもがトイレで排尿する放尿感と尿を出す時の視覚や聴覚的感覚を体験させることが大切です。
●ステップ3(昼間のおむつを外してみる)
・トイレやオマルに坐らせてみて2回に1回は排尿できるようになった時を目安に、昼間のおむつを外してみましょう。勿論尿意があってもうまく伝えられなく、失敗してお漏らしをしてしまう場合もありますので、お母さんが失敗を嫌う場合には、8割程度の成功率になってからでもかまいません。
●ステップ4(言葉でシーと表現出来ない場合)
・トイレへ連れていけば排尿できるが、自分からシーがしたいと表現出来ない場合もあります。その場合にはトイレへ連れていく時間を出来るだけぎりぎりまで待って、膀胱に出来るだけ沢山の尿をためさせ、尿意を感じさせてからトイレへ連れていきます。タイミングがずれ途中で漏らし失敗してもしからないことが大切です。
E夜尿についての育児相談
・夜尿は、夜間睡眠中に脳下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンの量が少
なくなるため、夜間に薄い尿が沢山作られ(通常の夜間尿量は170cc程度が340cc程度と2倍になる)、尿量が多くなることともに膀胱容量が小さすぎたりすることが原因です。
・また夜間の尿量が多くなくても夜尿になる場合もあり、その場合は膀胱機能が低下し膀胱に十分な量の尿を貯めることが出来ないためであります。つまり機能的膀胱容量が小さいためであります。また夜間睡眠中は大脳皮質の機能も低下しますから尿意を十分知覚することが難しくなります。
・幼児期の夜尿は生理的なものなので心配なく、薬物治療の適応にはなりません。しかし昼寝の際にもおねしょうする場合や学童期になっても毎晩おねしょうが認められる場合には、生活指導や薬物治療の対象になってきます。
・夜尿する時刻から3つの型があり、重症度を予測する上で参考になります。
すなわち、寝入りばなに夜尿する場合には、自立するまでまだまだ時間がかかり重症であること(寝入りばな型)、一方明け方の夜尿の場合には、夜尿が改善しつつあると考えられ(明け方型)、そして夜尿が認められない夜がある場合には自立まであと一歩ということになります(夜尿なしの間歇型)。
・夜間強制的に子どもを起こさない(夜尿起こしはしない)
抗利尿ホルモンは睡眠が安定すると十分分泌されるので、夜尿を防ぐためによる起こすと就眠リズムが分断され分泌低下を起こし、多量遺尿型の夜尿を固定化させます。
中途で強制的に覚醒させトイレで排尿させることは夜間睡眠中に十分尿を貯める力をそこなう習慣をつけることになり、機能的膀胱容量が不安定になります。一方夜間に目覚めてトイレで排尿した場合には、布団におねしょうをする問題が解決されたように錯覚しますが、夜間に作られる尿量が膀胱容量より多い状態が続くわけで、生理的に早尿の状態を続けていると理解すべきであります。
・夕方からの水分摂取を少なくする
日中を含めて水分のがぶ飲みは止めるようにしましょう。1回に飲む水分量はみそ汁、牛乳、水、果汁、果物などを含めて150cc程度にしましょう。水分摂取量は朝方に多めに夕方からの水分量を控え目にするリズムを習慣づけましょう。
・塩分摂取を控えましょう
塩分には利尿作用があり撮りすぎると尿量が増え、のどが渇いて水分を多く摂取するようになるため悪循環になります。味付けは薄味として、塩分の多い食べ物は、夜はできるだけ控えるようにしましょう。
・日中の排尿訓練
日中すぐトイレに行きたくなり、何度もトイレへ通う頻尿傾向のある場合は膀胱機能が未熟で機能的膀胱容量が小さい可能性があります。出来るだけ多くの尿を膀胱へ溜めることが出来るよう訓練するため、日中尿意があってもすぐトイレへ行って排尿させるのではなく、心持ち排尿を我慢させてからトイレへ行く練習をしてみましょう。
・夜尿を決してしかってはいけない
夜尿をしたことを決してしかってはいけません。あせらず、しからず適切な生活指導をして、根気よく経過をみていくと、通常は小学校へ入る頃までに夜尿はなくなってしまいます。
F テレビ・ビデオ・スマートフォン・ゲームの使い方
・テレビ、ビデオ、スマートフォンなどでゲームすることは現代の子ども達の日常生活の一部になっており、子どもの生活に大きな影響を与えています。
・長所としては、テレビにより様々な知識を吸収し、想像力を豊かにし、家族や友達と共通の話題を共有しコミュニケションを深めることができます。
・短所としては、1日10時間以上も長時間の視聴により子どもの知的発達が阻害され、読書をしなくなる、学習時間が減る、運動不足を助長し、間食による肥満から生活習慣病を惹起すること、タバコやアルコールなどの好ましくないコマーシャル放送による喫煙や飲酒への好奇心の助長、子どもに推奨できないTV番組の視聴、特に暴力や殺人シーンの視聴により子どもを暴力的・攻撃的な問題行動に駆り立てたりする要因になるという危惧が、世界各国の小児科学会から指摘されています。
・どのようにメデイアを利用すべきか
テレビ、ビデオ、ゲームなどを含むメデイアが子どもの心の発達に対する影響を考慮し、小児科医や小児保健に従事する関係者から節度ある利用の重要性について社会にたいし啓発活動が行われています。
子どもの年齢や発達程度や好みなどを十分考え、どのような番組を子どもに見せるべきか保護者が注意深く選択し、必ず子どもと一緒に視聴し、内容を話し合い、必要なことを保護者の立場から子どもに話してあげ、子どもが番組を批評、批判する力を育てることが大切であります。テレビの視聴時間は1〜2時間以内とし、視聴したい番組を選択する必要があり、無制限に番組視聴をすることは好ましくないとしています。テレビを見る代わりに出来るだけ多く読書の時間をとり子ども部屋にはテレビはおかないことが重要です。2歳未満の子どもには、長時間テレビを見せないよう保護者へ啓発活動が行われています。
子どもの発達に良い番組もありますが、幼児期の心の発達を促すためにはテレビより友達と遊ぶ時間を多く取る方がより重要と考えられます。 |