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子どもが病気やけがをしたり事故にあったりした場合には、どのように対応すべきか予備知識を持っていると役立ちます。

1 発熱

電子体温計で体温を測定した場合、37.5℃以上になっていれば発熱していると考えます。

発熱の原因はいろいろありますが、一番多いのはウイルスや細菌による感染症です。
からだは体温を高く保つことにより体内へ侵入した病原体が増えにくくし体を守ろうと反応とします。
発熱は自分を守るための体の防護反応(免疫反応)です。

(1)  全身状態の観察ポイント

子どもは夜間に熱を出しやすく38.5℃以上を高熱と考えます。
高熱のある場合には、1日に3〜4回体温を測定グラフにしますと体温の変化が一目でわかり病気の診断に役立ちます。

お子様の全身状態の変化を観察していると緊急度の判断に役立ちます。
高熱のある子どもの全身状態を観察することでお子様の緊急度を判断できます。
すなわち
・ 子どもの表情や
・ 機嫌の善し悪し、
・ 意識状態、
・ 呼吸が苦しそうか、
・ 顔色が青白く手足が冷たくないか、
・ 食欲はあるのか、
・ 水分摂取はきちんとできているのか、
・ 尿はいつもとおりでているのか、
などについて観察しましょう。

(2)  直ちに救急受診した方が良い場合

・3か月未満の赤ちゃんの高熱
生後3か月未満の赤ちゃん38度以上の熱がある場合は、髄膜炎や尿路感症などの重い病気が隠されている可能性があるので、早めの受診が必要です。

・重い脱水状態
頻回の嘔吐や下痢で食欲もなく水分も飲めなく、尿も半日以上出ていない場合には、重い脱水状態であると考えられます。

・意識状態の異常
・笑わず機嫌が悪く、
・あやしても激しく泣き泣きやまない、
・普段のように遊ばずごろごろしている、
・うとうと眠ってばかりいる、
けいれんを起こし意識がぼんやりしている
などの状態が認められる場合には、意識状態に異常をきたしている可能性が考えられます。

・呼吸状態の異常
・呼吸が早くて苦しそう、
・小鼻がピクピクしている、
・肩を上下させて肩呼吸をしている、
・胸がぺこぺこへこみ陥没呼吸
になっているような場合には、呼吸状態の異常が考えられます。

・循環状態の異常
・顔色が悪く青白く、
・くちびるの色が青白く紫色に見える(チアノーゼ)、
・手足がつめたい
などの状態が認められる場合には循環状態の異常があります。

(3)  少し様子をみてから救急受診の必要性を判断してよい場合

・熱があるけれども機嫌は悪くなく、
・あやせば笑い遊ぼうとする、
・横になって眠ることができる、
・食欲は落ちているけれどまだ食べることも水分をとることも可能
であれば、手当てをしながら全身状態の変化を観察し受診の必要性を判断してもかまいません。

(4)  家庭で看護するポイント

@ 全身状態の観察
熱がでてから咳や鼻水、嘔吐や下痢、耳痛や発しんなどの症状が出てこないか、食欲と排尿・排便、睡眠と機嫌、意識状態、呼吸状態などを観察し体温の変化を記録しましょう。

A 解熱剤(アセトアミノフェン)の使用
高熱で食欲や水分摂取が落ちないようにするため、38.5℃以上の高熱がある場合には解熱剤の使用を考えて下さい。

小児に使用する解熱剤としては、「アセトアミノフェン」がすすめられています。
1回の使用量は、体重(kg)あたり10〜15mgです。

座薬やシロップ、粉薬、錠剤などの剤形がありますので、つかいやすい剤形をえらび使用することが出来ます。
一般的に乳幼児はシロップ又は粉薬、座薬学童では粉薬や錠剤を使用することが多いです。

解熱剤は6〜8時間程度の時間をあけて使用しましょう。

使用すると体温は通常1度程度下がり6〜8時間持続します。

脱水で汗が出にくい状態だと、解熱剤を使用しても熱が下がりにくいため、水分も充分与え、また冷やしたぬれタオルなどで全身を冷やすのも有効です。 

A 3か月以下の乳幼児の場合
子どもが3か月未満の場合はアセトアミノフェンシロップを使用するよりも、検査などで発熱原因を早く診断してもらうことが重要です。

B 熱さまし(冷却法)について 
高熱が出始めるときは、寒さを訴えたり、ふるえたり(悪寒)、手足が冷たくなったりします。
このような場合は暖かく保温するとよいでしょう。

少し時間が経ち、逆に手足が暖かくなりあつがるようになれば薄着にし、本人が嫌がらなければ氷枕やアイスノン・冷たいぬれタオルなどで首まわりやわきの下、足の付け根などを冷やしてあげましょう。

・多量に発汗し下着がぬれている場合には、ぬるま湯でぬらしたタオルで全身をふき、新しい下着に着替えさせましょう。吐き気がなく本人が飲めれば、水分を充分与えましょう。

2 咳嗽(せき)と喘鳴(ぜーぜー)

のどや気管にウイルスや細菌が感染したり、気管支喘息の原因になるほこりやダニなどのアレルゲンを吸い込んだり、あるいは誤って異物などを飲み込んだりした時には、体はそれを排除しようとして咳をします。

咳も空気の通り道(気道)を確保しようとする体の防衛反応です。

(1)  全身状態の観察ポイント

咳やゼーゼーで呼吸が苦しくなってきた場合、全身状態がどの様に変化したのか把握することが、病気の緊急度を判定するうえで大切です。呼吸回数や咳の状態、顔色や食欲、機嫌などの全身状態の変化を注意深く観察しましょう。

@ 正常な呼吸回数
正常な時の一分間の呼吸数は、新生児では40〜50回乳児は30〜40回幼児は20〜30回です。

A 咳の性状
乾いてひびく咳か(乾性咳嗽)、犬の遠吠えのような咳か(犬吠様咳嗽)、オットセイのような鳴き声か、湿った重い咳か(湿性咳嗽)などに注意しましょう。

B 呼吸困難の状態
・呼吸が速いか(多呼吸)、
・ 肩を上下させるか(肩呼吸)、
・ 胸や首の下方が呼吸の度に引っ込むか(陥没呼吸)、
・ 息苦しくて横になれないか(起坐呼吸)、
・ 小鼻をヒクヒクさせるか(鼻翼呼吸)、
・ 吸う息(吸気)に比べはく息(呼気)が長くなっているか(呼気の延長)、
・ 呼吸の度にゼーゼーするか(喘鳴)、
・ 走ったり動くだけで咳き込むか、
などの異常の有無を確認しましょう。

C 呼吸困難や呼吸不全の確認
呼吸困難になると、食欲がなくなり食事はとれず、水分も飲めなくなります。
機嫌も悪く遊ばなくなり、横になって眠れなくなります。
呼吸不全になると、顔色や唇の色が青白く紫色になりチアノーゼといわれる症状が現れます。

(2)  直ちに救急受診した方が良い場合

@ 気管支喘息中発作・大発作で呼吸困難や呼吸不全の状態
・不機嫌で顔色が悪くぐったりし、
・唇や爪の色も悪く、
・発熱をともなったり、
・のどや胸がヒューヒュー・ゼーゼーし苦しがる、
・多呼吸、
・肩呼吸、
・陥没呼吸、
・鼻翼呼吸、
・起坐呼吸
など呼吸困難症状がある場合

A 急性喉頭炎(クループ症候群)で呼吸困難な状態
犬の遠吠えやオットセイの鳴き声のような咳が頻回に出て、呼吸が苦しく、意識状態がもうとうとしている場合は、直ちに医療機関を受診しなければなりません。

B 異物を誤飲して呼吸困難になった状態
口に「もの」をくわえて遊んでいた子どもが、急に咳き込み呼吸困難になった場合には、喉に物をつまらせた可能性が高いので119番通報し緊急受診しましょう。

(3)  しばらく様子をみてから救急受診の必要性を判断してよい場合

咳が出ていても食欲があり、遊ぶことも出来、呼吸数も正常で、呼吸困難の状態がない場合は、翌日に受診してもよいと思います。

(4)  家庭で看護するポイント

@ 部屋の環境
室温は20〜22℃程度、湿度は50〜60%へ調整し空気の乾燥を防止しましょう。
咳き込み横になって眠れないときは上体を起こし背中に布団をあてがったり、背もたれで支えてあげましょう。
脱水になると痰が出にくくなるので、水分は充分与えましょう。

A 全身状態の観察
気管支喘息発作を起こした場合、発作時に使用する飲み薬や吸入薬が予め処方されていれば、医師の指示に従って薬剤を使用し、症状がよくなるか経過観察して下さい。

薬を使用しても改善せず、呼吸が苦しく、会話が出来ない、眠れない、食事がとれない、多呼吸、肩呼吸、鼻翼呼吸、起坐呼吸、チアノーゼなどの症状がある場合は、至急医療機関を受診して下さい。

3 下痢

細菌やウイルスの感染で胃腸炎をおこすと下痢症状が生じます。

(1)  全身状態の観察ポイント

@ 便の性状の観察
便の性状(水様便か、泥状の便か、軟らかい便か、少量か大量か)、色(黄色いか、白いか、黒い便か)、便の臭い(腐った臭いか、酸っぱい臭いか)、血液の混入の有無と、量や回数などを観察して下さい。

A 異常な下痢便とは
異常な下痢便とは、水のような便(水様便)・軟らかい便(軟便)・どろどろの便(泥状便)などの下痢便や不消化な食物を含む不消化便、白色便、黒い色のタール便、血液や粘液を含む粘血便などがあり、下痢便の臭いには酸臭や悪臭などがあります。

B 受診する際の準備
便を持参して受診してもよいですし、便の状態をスマートフォンや携帯電話で撮影して医師へ見せてもらっても診断に役立ちます。
また園や学校、家庭などで胃腸炎が発生していないか確認しておくことも、診断に役立ちます。

(2)  直ちに救急受診した方がよい場合

食欲不振や不機嫌で高熱があり、頻回の水様下痢や粘血便、黒いタール便や、嘔吐、腹痛症状があり、脱水症状(元気がない、機嫌が悪い、舌や口唇が乾いている、皮膚が乾燥、尿が半日以上でていない)があり、排便後も強い腹痛症状が続く場合には直ちに救急受診して下さい。

(3)  しばらく様子を見てから救急受診の必要性を判断してもよい場合

発熱や頻回の水様下痢や嘔吐があるけれど、機嫌は悪くなく、食欲もあり水分摂取もでき、脱水症状(尿の回数が少なくなっている、くちびるやしたが乾いている)を認めない場合には、消化しやすい食事や電解質液を少しずつ与えながら様子をみ、翌日医療機関を受診してもかまいません。

(4)  家庭で看護するポイント

@ 水分補給
吐き気や嘔吐がなければ下痢による脱水を防ぐため水分を充分与えましょう。
母乳を飲んでいる場合は、そのまま継続して与え、母乳保育を止める必要はありません。

A 経口補水液(ORS)
何度も吐いたり下痢しているときの水分補給は麦茶や湯冷ましで与えるよりも、市販の経口補水液(ORS:例OS1)を使用する方が電解質の不足を防ぐことができます。家庭でも簡単にORSを作ることが出来ます。
そのレシピは、食塩3gと砂糖40g(大さじ4杯半)を1リットルの水に溶かしレモンやグレープフルーツの絞り汁を加えて味付けすると完成です。

B 市販のスポーツドリンク
市販スポーツドリンクや赤ちゃん用イオン水、成人用イオン飲料水なども販売されていますが、これらの電解質液はナトリウム濃度が低いため、大量に与えると低ナトリウム血症をおこすことがあります。OS1を飲めない場合には、みそ汁やうどん汁などを少しずつ与えながら麦茶や番茶などの水分を与えてもよいです。

C 食事の与えかた
下痢症状が改善し食欲が出てきたら、野菜スープやりんご・おかゆ・煮込みうどん・雑炊や芋類など炭水化物中心の食べ物にしましょう。

消化しにくい脂肪やタンパク質の食べ物は、消化機能が十分回復してから与えましょう。
下痢が軽症の場合、ミルクは制限せず、また薄める必要もありません。消化しやすい離乳食であれば中止する必要はありません。

D お尻のただれ予防と手当
オムツをしていると下痢でお尻がただれることがよくあるため、お尻だけでもお風呂やシャワーでよごれを洗いながし清潔にたもちましょう。赤くただれた場合には、塗り薬の処方を受けましょう。

4 嘔吐

子どもは色々な原因でよく吐きます。生まれて間もない赤ちゃん(新生時期)の場合には、髄膜炎や敗血症、頭蓋内出血や消化管閉鎖などの重い病気の可能性がありますし、乳児期には肥厚性幽門狭窄症や腸重積症、イレウス、胃腸炎などの消化管の病気や食物アレルギー、髄膜炎のような脳の病気も考えられます。

幼児期や学童期になると胃腸炎や虫垂炎、髄膜炎などというように、子どもの発達年齢によって嘔吐の原因も異なってきます。

(1)  全身状態の観察ポイント

@ 嘔吐の性質と原因
・いつごろから吐きはじめ何時間ぐらい続いたのか、
・ 全部で何回くらい嘔吐したのか、
・ 吐いた内容はどんなものだったのか、
・ 胃液だけだったのか、
・ 食べた食物がそのまま含まれていたのか、
・ 吐物に血液が混じっていたのか、
・ 黄色い胆汁が混じっていたのか、
・ 吐いたものは少量だったのか大量だったのか
など、吐物の性質をよく観察するとともに、咳で吐いたのか、あるいは頭などを打ってから吐きはじめたのか、嘔吐の原因になったと思われるきっかけがなかったのか、よく思い出してみましょう。

A 子どもの全身状態
・こどもの機嫌や意識はおかしくないか、
・ 食欲はあるのか、
・ 尿はでているのか、
・ 呼吸は苦しそうでないのか、
・ 顔色は悪くないか、
・ 手足は冷たくないか、
・ 頭痛はないか、
・ 発熱はないか、
・ けいれんがあったのか
など、子どもの意識や呼吸・循環状態に注意をはらいましょう。

B 乳児の嘔吐の場合

生後1〜2か月の乳児が、哺乳の度に頻回に噴水状に大量に嘔吐するようになった場合、先天性幽門狭窄症という病気の可能性があります。
男児に多く、ミルクを飲んでも直ぐ嘔吐するため、体重も増えなくなります。
溢乳(いつにゅう)といって乳児がミルクを飲んだ後にだらだらと口からミルクを出す場合もあります。
また母乳やミルクと一緒に飲み込んだ空気をゲップで排気していない場合、一度ゲップを出したあとも、またゲップとともにミルクを嘔吐することもあります。

(2)  直ちに救急受診した方が良い場合

@頻回に嘔吐し唇や舌が乾燥し半日以上尿が出なかったり、高熱や激しい腹痛を訴え、非常に不機嫌で苦しそうな場合。

A 吐いた物が食物残渣だけでなく、黄色や緑色をした胆汁を含む場合や血液が混じり赤黒いコーヒー残渣のような色をしている場合。

B 乳児が10〜20分毎に嘔吐し、その都度激しく泣き機嫌が悪く、オムツに血液の混じった便がでるような場合は腸重積症という病気の可能性が考えられるため直ちに受診が必要です。

C 強い頭痛を訴えたり、嘔吐する前に強く頭を打ったことなどがある場合、けいれんを起こしたり意識がぼんやりしてきた場合などは、髄膜や脳の出血などの可能性があるため直ちに受診しましょう。

(3)  しばらく様子を見てから救急受診の必要性を判断してもよい場合

@ 嘔吐の回数が数回で、30分程度すると吐き気もおさまり、少しずつ水分を与えると吐かずに飲め、下痢や発熱、腹痛などの症状がなく、機嫌も良く、食欲もあり、よく眠ることが出来る場合は、家庭で全身状態の変化や嘔吐・下痢症状の有無を観察し翌日受診してもかまいません。

A 嘔吐が一度おさまった後、経過を見ているうち再び嘔吐し始め、何度も嘔吐を繰り返すようになった場合には、翌日まで待たずに受診しましょう。

(4)  家庭で看護するポイント

@ 嘔吐と全身状態の観察
多量に勢いよく何度も吐くのか、それとも数回だけで直ぐ吐き気や嘔吐がおさまるのか、機嫌は良いのか悪いのか、嘔吐に伴ってお腹をいたがるのか、発熱があるのかどうか、頭痛を訴えるか、機嫌はどうか、食欲はどうかなど嘔吐の様子と全身状態の変化に注意しましょう。

A 吐物の誤嚥防止
嘔吐したとき口の中に吐物が残っている場合には取り除き、うがいが出来る場合はうがいをさせ、口の中を清潔にしましょう。
次の嘔吐がないかしばらく様子を観察するとともに、寝かせる時は吐物が気管に入らないよう横向きに寝かせましょう。

B 水分補給
30分程度吐き気や嘔吐がないか様子を見、嘔吐がなければ湯冷ましや経口補水液(ORS)を少量ずつ与えましょう。

C 汚物の取り扱い
・吐物や下痢便などの汚物には感染性の強いウイルスや細菌が含まれている可能性があるので、感染防止のため汚物を正しく処理しましょう。
まず使い捨て手袋を使用し汚物を除去しましょう。ビニール袋に汚物を入れ、周囲を汚さないようにしましょう。

ノロウイルス胃腸炎の汚物は、

50倍希釈した塩素系漂白剤液
(市販の次亜塩素酸ナトリウム液20mlに水1000mlを加えると50倍液が作れます)

に、ひたした布で吐物を拭き取ります。

 

汚れた衣類などは

50倍 次亜塩素酸ナトリウム液

に10分間程度浸して消毒しましょう。

色落ちする衣類などは、85℃の熱湯1分程度消毒すればよいでしょう。

消毒後、一般の洗濯物と分別して洗濯をしましょう。

5 腹痛

赤ちゃんが繰り返し泣く時は、お腹が痛がっている可能性があります。鳴き声や姿勢などにも注意して観察しましょう。

(1)  全身状態の観察ポイント

・乳児の場合はお腹が痛いと訴えることができないので、顔色や嘔吐の有無、食欲、機嫌、お腹がふくれていないかどうかなど、全身状態の変化に注意しましょう。
4〜5歳以上の幼児や学童になると言葉で自分の症状を表現できるようになるので、お腹が痛いのか本人に直接聞いて確かめましょう。

・何時からお腹が痛くなったのか、お腹のどのあたりが痛いのか、お腹が痛くなるきっかけや原因があったのかどうか(お腹を打ったことはないのか、下痢や便秘はないのか、機嫌や顔色、下痢、嘔吐などの症状がないのか確認しましょう。

(2)  直ちに救急受診した方が良い場合

・お腹に何らかの異常がある場合には、痛みは数時間たっても持続し増強することが多いので、全身状態や腹痛の変化を経時的に見ていくことが大切です。

・以下の様な場合には直ちに受診する必要があります。すなわち、
  ●お腹をぶつけてから、おなかを激しく痛がるようになった。
  ●また(股)や股の付け根(陰のうや睾丸)を痛がり、腫れている。
  ●お腹が強く張っていて、強く痛がる。
  ●時間の経過とともに腹痛が次第に強く激しくなり、同じ場所を押さえ痛がる。
  ●激しく何度も吐き、食欲が全くなくグッタリしている。
  ●何度も周期的に吐き、便の中に血が混じっている。
  ●吐物の中にコーヒの残りかす(コーヒ残渣)のようなものが認められる。

(3)  しばらく様子を見てから救急受診の必要性を判断してもよい場合

・お腹が痛いと訴えるけれども機嫌よく遊んでいる、食べたり飲んだりもできる、下痢の症状があり腹痛を時々訴えるけれども時間の経過とともに痛みは和らぎ、顔色も悪くない場合。

・浣腸で便を出したあとは痛がらなくなったような場合には、様子を見ても構いません。

・しかし腹痛の状態を観察していても痛みが良くならず持続し、全身状態も優れないようであれば、迷わず救急受診をしてください。

(4)  家庭で看護するポイント

@ 排便させてみましょう
トイレへ連れて行って排便させてみましょう。排便を促すためにお腹を「の」の字を描くように撫でてあげると排便しやすくなることがあります。
硬いころころの便がでた後、お腹の痛みが良くなれば、便秘のために腹痛があったのだと考えられます。

A 家庭での浣腸
市販の浣腸液を年齢相当の量を使って浣腸を試みてもかまいません。
浣腸して排便してもお腹の痛みが良くならず、便に血が混じっているような場合には、腸重積症が疑われますので、写真に撮ったり、血便を持って受診しましょう。

6 けいれん(ひきつけ)

(1)  こどものけいれん

@ けいれんの分類(有熱性、無熱性)
・ひきつけは、からだの全体や、体の一部が突っ張ったりピクピクしたり脱力したりする状態をひきおこす病気で、脳や代謝機能の異常でおきるけいれん性疾患です。

・ひきつけを起こした場合、お子さんに熱があるかないかで病気の原因を診断が異なってきます。熱がある場合は「有熱性けいれん」、ない場合は「無熱性けいれん」といいます。

A 有熱性けいれん
有熱性痙攣の原因には、頻度は少ないですが「脳炎や脳症」、「髄膜炎」などの重い病気がありますが、一番多いのは「熱性けいれん」です(けいれん性疾患の7割から8割を占めます)。

B 無熱性けいれん
無熱性けいれんでは、乳児にみとめられる「良性乳児けいれん」や「泣き入りひきつけ」などのほか、てんかん、低血糖、低カルシウム血症、頭蓋内出血、脳梗塞など、様々な病気があります。

C 熱性けいれんの分類(単純型と複雑型)
熱性けいれんには「単純型熱性けいれん」と「複雑型熱性けいれん」があります。

D 単純型熱性けいれん
・単純型熱性けいれんの多くは、1歳から3歳頃までに初めてひきおこすことが多く、けいれんの形は左右対象性で、5分程度で治まり、意識も回復します。

・突発性発疹やインフルエンザで高い熱が上がる際によく認められます。両親や同胞も熱性けいれんを起こしたことがあります。単純型熱性けいれんの頻度は5%くらいで、大部分が1〜2回の発作でおわります。

E 複雑型熱性けいれん
・複雑型熱性けいれんは、1歳未満や6歳以上の子どもで多く、痙攣の持続時間が15分以上と長く、けいれんの形も片側性だったり、体の一部が突っ張ったりピクピクしたり脱力する部分発作という型のことが多く、単純型熱性けいれんの左右対称性と違い非対称性という特徴を示します。

・けいれん回数も1日に2回以上起こすことが多く、年間でも5回以上、全経過では10回以上も起こすことがあり、けいれん回数が非常に多いという特徴があります。

・発熱も38度未満の微熱でおこしやすく、家族にてんかんなどの患者さんがいたりします。けいれんが起きる以前にすでに神経学的異常や発達の異常が認められる場合があります。

F 無熱性けいれん(泣き入りひきつけ、良性乳児けいれん)
・子どもの非てんかん性のけいれんとして、泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)と良性乳児けいれんがあります。

・泣き入りひきつけは赤ちゃんが、痛みや怒って激しく泣くことをきっかけに呼吸を停止し、意識をなくし、ぐったりし、けいれんを起こします。
自然に回復しますので、しばらく様子を観察しましょう。

・乳児けいれんは無熱性の全身性あるいは部分性のけいれん発作です。
小児神経専門医を受診して下さい。
その他に無熱性の非てんかん性のけいれんとして低血糖や低カルシウム血症、頭蓋内出血や脳梗塞などで無熱性痙攣を起こすことがありますので小児科を受診しましょう。

G けいれんと脳機能の後遺障害
・単純型熱性けいれんで脳に障害を起こすことはほとんどありません。
しかし複雑型熱性けいれんや脳炎・脳症などで長時間けいれんが止まらない「けいれん重積状態」が続く場合には、後遺症を残す可能性もあります。

・けいれんが30分以上つづき意識がない状態や1回のけいれんが短いながら30分以上繰り返して持続し、その間意識が戻っていない状態を「けいれん重積状態」と定義されています。
通常痙攣をおこし救急車などで救急外来に運ばれてきたときにも痙攣が止まっていない場合は、けいれん重積状態であると考えられます。

・急に高い熱が出て手足がふるえているけれども、意識はしっかりしている場合は、急に高熱がでて寒けがし(悪寒)ふるえているためと考えられます。
このような場合の時は緊急受診の必要はなくあたたかくし、熱を下げて様子を見ましょう。

(2)  全身状態の観察ポイント

眼の位置、手足の状態、顔色、意識の有無、呼吸状態、呼びかけにきちんと応えるかどうか、けいれんの長さ、発熱の有無などを観察して下さい。

(3)  直ちに救急受診したほうが良い場合

・はじめてけいれんを起こした、
・ けいれんが5分以上続いている、
・ けいれんが30分以上止まらない、
・ けいれんの後、1時間以上立っても意識が戻らない、
・ けいれんの後に繰り返し吐く、
・ けいれんの後に意識が戻らないうちに、またけいれんが起きた、
・ 半日に2回以上けいれんが起きる
ような場合には、急いで救急受診をしましょう。

(4)  しばらく様子を見て救急受診の必要性を判断して良い場合

けいれんが1回だけで5分以内にとまり、呼びかけに反応し目を開けて周囲を見回すなど意識が回復したことが確認出来れば、様子を見たうえで受診しても構いません。

(5)  家庭で看護するポイント

@ けいれんの状態や全身状態の観察
はじめてけいれんを起こすと慌ててしまい、子供の状態を冷静に観察することが困難になりますが、気持ちを落ち着かせ、白目をむいて(上転して)いないか、手足を突っ張っていないか、それともがくがくと手足をふるわせていないか、手足を左右対称にふるわせていないか、それとも左右ことなる動きをしていないか、けいれんの時間がどのくらい続いているのか観察しましょう。

A 吐物の誤嚥防止と楽な呼吸姿勢の確保
平らなところで顔を横に向かせて寝せ、吐物を吸い込んで窒息しないように注意しましょう。
呼吸が楽になるように、頭を後ろへ反らせてあげ、きつい衣服を着ている場合には、衣服を緩めて楽に呼吸がし易いようにしましょう。

B 舌やくちびるのかみきず(咬傷)防止
けいれんの始めに舌や唇をかみ出血することがありますが、自然に血はとまります。
あわてて口の中に物や指を入れないよう注意して下さい。
指を入れると咬まれてけがをする危険性があります。
けいれんの途中では舌やくちびるをかむ危険性はなくなるので、口の中にスプーンや箸のような物は入れないように気をつけましょう。

C 水分や食べ物、薬の与えかた
けいれんを起こした後に、すぐ水分を与えたり食べ物や薬を飲ませたりはしないように注意しましょう。
D 解熱剤とダイアップ座薬の使用法
・これまでに熱性けいれんと診断されたお子さんが、発熱時に熱性けいれんを起こさないようにするためダイアップ座薬を使用する場合があります。

・2015年、熱性けいれん診断ガイドラインが改正され、熱性けいれんを予防する際のダイアップ座薬の使用基準に変更が生じました。

・ダイアップ座薬は熱性けいれんの再発予防に有効であるため、これまでは熱性けいれんを起こしたことのある小児に予防のため使用されてきました。しかし熱性けいれんの3/4は、発熱しても1〜2回しか熱性けいれんを起こしませんし、ダイアップ座薬を使用することにより、ふらつきなどの副作用がでることもあるため、新ガイドラインではダイアップ座薬は複雑型熱性けいれんに使用しようとというように適応基準が厳しくなりました。

・すなわち15分以上持続する遷延性けいれん発作や、熱性けいれんをこれまで2回以上繰り返し、かつ次の@からEまでのうち少なくとも2つ以上の要件を満たす場合にダイアップ座薬を使用すると規定しました。

 @ 部分発作又は24時間以内に反復する
 A 以前から神経学的異常や発達遅滞がある
 B 熱性けいれんやてんかんの家族がいる
 C 生後1歳未満である
 D 発熱後1時間未満で発作を起こしている
 E 38℃以下で発作を起こしている 

・ 新ガイドラインでは、熱性けいれんの再発予防に発熱時の解熱剤使用は有効という証拠が今の所証明されていないため、再発予防のための使用を奨めていおりません。

7 頭部打撲(あたまをぶつけたとき)

高いところから落下し頭部を打撲する頭部外傷が、子どもの外傷で一番多くなっています。

(1)  全身状態の観察ポイント

頭痛や吐き気、嘔吐の有無、目や手足の動きを観察しましょう。頭を強く打っても、頭の骨に異常がなく意識がはっきりとしていて、目や手足の動きにも異常がなく、頭部を打ってから2日間程度異常がなければ、まず心配はいりません。

しかし頭蓋内出血を起こすと、打った直後には異常がなくても数週間たってから異常症状が認められる場合もあるので注意は必要です。

(2)  直ちに救急受診した方が良い場合

@ 意識障害やけいれんがある場合
転倒し石やコンクリート、アスファルト、鉄パイプ、風呂場のタイルなどに強く頭部を打撲した場合や1m以上の高さから転落し頭部を打撲し、意識がなくなったり、けいれんを起こしたりした場合

A 繰り返し嘔吐する場合
7か月以下の乳児が頭部を打撲し頭部がぶよぶよになったり、大量の出血があったり、受傷後30分以上すぎても繰り返し嘔吐が続く場合

B 強い頭痛と意識障害
・頭痛が次第に強くなってくる場合、
・打撲後1分以上意識がなくなった場合
・意識がはっきりせず、ぼんやりもうろうとする状態が続く場合

C 四肢の運動障害がある場合
身長よりも高い場所からの転落などで手足の動きがおかしくなり動かせなくなった場合

D 出血などがある場合
耳や鼻から出血がある場合などは、緊急受診の必要性があります。

(3)  しばらく様子を見てから救急受診の必要性を判断してもよい場合

打撲直後に嘔吐したが、その後は嘔吐もなく元気にしている、打撲直後はぼーっとしていたが、数十秒後には普通通りになっている場合などは、経過を見て、異常症状が現れた場合に医療機関を受診しましょう。

(4)  家庭で看護するポイント

・頭部打撲後、直ぐに泣いたかどうか、意識障害等がなかったか注意しましょう。
家庭での対応は、打撲部位をすぐ冷やし、24時間程度は室内で静かに遊ばせ、入浴や激しい運動などは避けましょう。
様子を見ていて、もし元気がない、顔色が悪い、吐くなどの症状が現れれば救急受診しましょう。

・もし異常がなければ、2日目はいつも通の生活で様子を見、普段と変わった様子がなければ大丈夫と考えてよいと思います。

・もし頭痛が次第に強くなってきたり、吐き気や嘔吐が認められる場合には、頭蓋内出血の可能性がありますので、その場合には救急受診をしましょう。

8 頭痛(頭を痛がるとき) 

子どもが、頭痛を訴えるとき、脳に重い病気があるのではないかと保護者は心配になります。頭痛の診断では痛みの部位や、性質、回数、痛みが現れる時間的経過、随伴症状などの有無に注意する必要があります。

(1)  全身状態の観察ポイント

・頭痛がいつから始まり持続しているのか、
・ どの部位が痛いのか(前頭部なのか、眼窩上部なのか、側頭部なのか、あるいは片側だけなのか)、
・ 痛みの性状(ズキンズキンと拍動性に痛いのか、鋭く刺すような痛みなのか、頭を締めつけられるような痛みなのか、鈍く重苦しい痛みなのか)、
・ 痛みの持続時間(痛みは短時間で良くなるのか、数時間から数日続くのか)、
・ 頭痛の起こりやすい時刻があるのか(朝に多いのか、午後や夕方に多いのか)、
・ 頭痛の周期性(毎日痛いのか、週・月単位で現れるのか)、
・ どのような随伴症状があるのか(発熱の有無、意識の変化、けいれんの有無、吐き気や嘔吐の有無、視野がピカピカ光るか、視野障害の有無)
に気をつけ観察しましょう。

(2)  直ちに救急受診した方が良い場合

髄膜炎、脳炎、脳腫瘍、脳血管障害(小児では脳動静脈奇形が原因のことが多い)、頭部外傷などの場合は緊急に救急受診する必要があります。
髄膜炎や脳炎では激しい頭痛とともに発熱、吐気、嘔吐などの随伴症状があり、けいれんや意識障害さえ認められる場合もあります。
乳児の髄膜炎や脳炎の場合には、高熱、不機嫌、食欲不振、全身状態がいつもと違いどことなくおかしい、嘔吐、けいれん、顔色不良などという症状しか気付かれない場合があります。

(3)  少し様子を見て救急受診の必要性を判断して良い場合

反復し持続する頭痛の場合、緊急に救急を受診する必要性は低く、全身状態の変化をみながら適切な時期に救急受診をして下さい。

よくある頭痛として発熱に伴う頭痛があります。重症感染症でなければ、アセトアミノフェンを使用して頭痛を和らげてみて下さい。

5歳以上の子どもには片頭痛が見られるようになります。

副鼻腔炎や中耳炎、てんかん性の頭痛、頭部や後頭部・肩などにこわばりを感じ、締めつけられるような頭痛が、学童期以降認められるようになります。

毎日登校前になると頭痛を訴え、日曜や休日になると訴えがなくなる場合には、心因性の頭痛の可能性も考えられます。

小学生高学年から中学生の学童時期に起立性調整障害のため頭痛を訴える場合もよくありますので、検査を受け診断を受けることをお勧めします。

(4)  家庭で看護するポイント

・頭痛のある場合、頭の位置を動かし変えたり、大きな音、光刺激などで頭痛がひどくなる場合がありますので、静かな環境で安静に休むことが大切です。

・鎮痛剤としてアセトアミノフェンやイブプロフェン等の解熱剤が使用されます。

9 意識障害(意識状態がおかしい)

意識障害がある場合は、命に危機的な状況のあることを意味します。意識障害は緊急事態と考え、家庭で出来る救命処置を施しながら救急車の到着を待ってください。

(1)  観察のポイントと家庭での対応

@ 意識の確認
・子どもの意識状態がいつもと違いおかしいと感じる時、大きい子どもの場合には名前を呼んで反応を確認したり、赤ちゃんであれば子どもの意識状態を確認しましょう。

・意識障害のある場合には名前を呼んでも反応しないか、反応が鈍いし、足裏を叩いても顔をしかめたり泣いたりしなくなります。

・意識を確認する際、決して子どもを揺すってはいけません
意識障害ありと判断した場合は、直ちに119番連絡をしましょう。

A呼吸と脈の確認
・救急車が到着するまでの間、呼吸と脈拍の有無を確認しましょう。
呼吸音の確認は耳で呼吸音を直接確かめたりして息を感じたり、あるいは子どもの胸の動きの有無を確認して確かめ、10秒以上呼吸がなければ、呼吸が止まっていると判断しましょう。

・脈の確認は慣れていなければ難しいかもしれませんが、子どもの場合は、上腕内側の上腕動脈(腋の内側)を触れ脈があるかどうか確認してみて下さい。
心肺蘇生を行わない状態で心肺が停止した状態が5分続くだけで救命率50%に低下してしまいます。

B 人工呼吸処置
・救急車が到着するまでの間、人工呼吸と胸骨圧迫心マッサージを行いましょう。
まず口の中を覗き異物がないか確認し、あれば異物を取り除き、頭部を軽く後屈させ気道を確保し、その位置を保ち、乳児の場合は保護者の口で乳児の口と鼻を覆うようにして息を吹き込みましょう。

・赤ちゃんの脈拍は1分間に120くらいなので、胸骨圧迫心マッサージは1分間に100回以上行い、15回毎に保護者の口から1回子どもの肺に空気を送りこんで下さい(1人で胸骨圧迫と人口呼吸する場合は15:1の割合)。
乳児の胸骨圧迫は両方の乳首を結んだ線の少し下側を指2本で胸の厚さの1/3以上へこむ強さで圧迫します。

(2)  直ちに救急受診したほうが良い場合

・子どもをあやしても笑わない、受け答えができない、寝ていて起きない、極端に長く眠りつづけるというような、いつもと様子が違う場合には意識障害の可能性があります。

・またひきつけた後に意識が戻らない、顔色が悪く手足が冷たかったり、起こした際の様子がおかしく、すぐうとうとと眠ってしまうような場合にも意識障害の可能性あるので、直ちに救急受診しましょう。

(3)  しばらく様子を見てから救急受診の必要性を判断してよい場合

高熱にうなされたり、あるいは寝起きや眠ったあとに、話しかけにきちんと応答できず、おかしな言葉を叫んだり、おかしな表情を示すけれども、時間とともに正常な応答ができ普段と変わらない行動や判断ができるのであれば、しばらく経過を観察し不安であるならば医療機関を受診してみるとよいでしょう。

10  発疹(ほっしん)・蕁麻疹(じんましん) 

子どもは様々な原因で、また様々な性状の発疹が皮膚や粘膜にでることがあります。

(1)  全身状態の観察ポイント

@ 発しんの性状
盛りあがっているかいないか、水疱かそうでないか、中に膿を含んでいるかいないか、徐々に増えたのか急に増えたのか、発しんの色はどうか

A 発しんの出現部位
手足に多いか、胸やお腹に多いか、背中に多いか、目や口などの粘膜にもあるのかどうか

B かゆみや痛みの有無
かゆがっているかいないか、痛がっているかいないか

C 原因
何か食べたり飲んだりした後にでてきたか、何かに触れて出てきたのか、動物に接していないか

D 随伴症状
熱はあるのかないのか、咳やゼーゼー(喘鳴)があるのか

(2)  直ぐに救急受診した方が良い場合

アナフィラキシーの場合は、ショックの可能性があるため緊急受診が必要です。

盛り上がった発疹(膨疹)があり全身を痒がり、すなわち蕁麻疹が唇やまぶたなどの顔面や全身にひろがり、咳やゼーゼー(喘鳴)し、呼吸困難な症状と不機嫌、顔色不良などの症状がある場合はアナフィラキシーであり、ショックに移行していくこともあるため、直ちに医療機関を受診する必要があります。

(3)  すこし様子を見てから救急受診の必要性を判断して良い場合

発しんやじんましんが出ても呼吸困難の症状がなく、元気で機嫌も良く、発しんが間もなく消えてしまう場合には、すぐに医療機関を受診する必要性がないので、発しんの経過を観察し適当な時間に医療機関を受診してください。

(4)  家庭で看護するポイント

・発しんのでている範囲が限られている場合はかゆみ止めの薬が入った軟膏を使用してもかまいませんが、全身に広範囲にでている場合にはかゆみ止めの抗ヒスタミン薬を服用する方が効果的です。

・かゆみの強い蕁麻疹のでている場合、お風呂に入るとかゆみが強くなり赤くなることがあります。湯船に入らずシャワーを使う方が良いでしょう。

11 耳痛(耳を痛がるとき)

中耳炎や耳下腺炎のある時などに耳の痛みを訴えることがあります。

(1)  全身状態の観察ポイント

痛みが激しい耳痛なのか、発熱があるのか、耳だれがあるのか、咳や鼻水があるのか、耳の後ろが腫れていないか、耳の下が腫れていないか、頭痛がないか(乳突洞炎や髄膜炎の可能性)などをよく観察しましょう。

(2)  直ちに救急受診した方が良い場合

耳の痛みが激しく発熱があり、耳だれがあり、2歳以下でグッタリしている、食事や水分を飲めない、頭痛や吐き気を伴う場合には救急受診をしましょう。

(3)  しばらく様子を見てから救急受診の必要性を判断して良い場合

年齢が2歳以上で、耳痛があるけれど機嫌は悪くはなく、発熱がなく、耳だれがなく、元気で食事も水分もとれる場合には、翌日に受診してもかまいません。

ただし中耳炎に乳突洞炎や髄膜炎、肺炎などが合併することがあるので、耳の後ろを痛がったり、激しい頭痛や咳を訴える場合には救急受診をしましょう。

(4)  家庭で看護するポイント

局所を冷やしたり痛み止めを使い耳痛を和らげてあげましょう。
肺炎球菌ワクチンは中耳炎も予防する効果があるので、乳児期に予防接種を受けるようにしましょう。

12 子どもの事故

(1)  溺水(できすい)

・1歳前後の子どもが家庭の浴槽で溺れて亡くなる事故が毎年発生しています。
お母さんがほんのちょっと目を放した瞬間に事故が起きることがありますので、たとえ短時間でも子どもを浴室に1人きりにしないようにしましょう。

・またひごろから子どもだけで浴室に入れないこと、子どもが小さい間は浴槽の水は溜めておかず、必ず抜くように気をつけ家庭での溺水を予防しましょう。

(2)  異物誤嚥(いぶつごえん)と窒息(ちっそく)

・赤ちゃんは生後7〜10 か月から2歳くらいの乳幼児は好奇心が強く、周囲にあるものを何でも手につかみ口に入れるようにになり、それにともない誤嚥事故を引きおこす機会が増えてきます。

・子どもがのどにつまらせる可能性のあるものを口に入れている場合、大声で注意すると驚いて逆に飲み込んでしまい、のどに詰まらせてしまう場合があります。
しかって泣かせたりせず、そっと口から出そうねと優しく話しかけるようにしましょう。

・また食べ物を口に入れたまま横にしたり、おむつを替えたり、飛び跳ねたり、ふざけて大笑いしたりするとのどにものをつまらせることがあるので、子どもが口にものを入れて遊んでいる場合には誤嚥に十分注意しましょう。

・子どもがのどに異物を詰まらせることの多いものは、あめ玉、キャラメル、こんにゃくゼリー、ピーナッツ等の豆類、野菜ステイック、アメ、ポップコーンなどの食品、おもちゃの部品、硬貨、ボタン、ボタン電池、化粧品、たばこなど、身の回りにあるもの全てが対象になります。

・またビニール袋などを頭にかぶって遊んでいたり、首にひもを巻いて遊んでいるうちに誤って自分の首を絞めて窒息してしまう場合もあります。

・また小さな赤ちゃんにはふわふわの寝具は使用せず、5歳以下の子どもにはピーナッツや豆類などを与えない、ビニール袋やひも電気コードなどを子どものまわりに放置しておかない、のどにつまらせる可能性のあるおもちゃで遊んでいるときは、子どもの様子に充分注意するなどの気配りが必要です。

@ 全身状態の観察ポイント
異物でのどや気管が完全につまってしまうと急に息が出来なくなり、顔色が真っ青になり窒息状態になります。
小さな子どもが口に物を入れ遊んでいるうちに飲み込み気管へ詰まらせ、異物を出そうとして急に激しく咳き込んだりゼーゼーします。気管が完全に塞がっていない場合には、激しい咳が続くとともに、数日してから熱がでるようになり肺炎の症状があらわれてきます。

A 直ちに救急受診をした方が良い場合
・異物を誤飲し急に激しい咳をし、泣こうとしても呻くか声にならない状態で、顔面が紫色になり(チアノーゼ)の場合には窒息状態におちいりやがて呼吸停止になります。救急車での緊急受診が必要です。

・また誤飲後けいれんがおきたり、意識がなくなったり、呼吸ができないない、嘔吐がとまらないなどの症状がある場合も救急車で緊急受診しましょう。

・異物を飲んでも意識状態や呼吸状態に異常がなく、けいれんや嘔吐などの症状がなければ、何をどれくらいのんだかよく確認しましょう。

・誤飲事故で最も多いのはタバコの誤飲なので、タバコの場合は何も飲ませずはかせてみましょう。
たばこを2cm以上のんだり灰皿の水を飲んだりした場合にはニコチン中毒になる可能性がありますので救急受診をしましょう。

タバコや灰皿を子どもの手のとどく所に置きっ放しにしない注意が必要です。

・灯油、ガソリン、ベンジン、除光液、ライター燃料、揮発油などの石油製品を誤飲した場合は、揮発性ガスを吸い込むことにより化学性肺炎をひきおこす可能性があります。
救急受診し、誤飲した後は少なくとも48時間程度の全身状態の観察が必要になります。

・ネズミ駆除剤などを誤飲した場合なども何も飲ませず吐かせず緊急受診する必要があります。

・強い酸やアルカリ性の潜在や漂白剤を飲んだときには牛乳を飲ませ、ナフタリンや樟脳などの衣類の防虫剤を誤飲した場合は水を飲ませ(牛乳はだめ)吐かせず救急受診しましょう。

・医薬品薬や化粧品(化粧水、香水、オーデコロン)を誤飲した場合には水か牛乳を飲ませ吐かせてみても構いません。救急受診しましょう。

B 誤嚥事故防止
・誤飲事故を防止するためには、日頃の大人の注意が重要です。
小さな小物どは子どもの手の届かない場所へ保管することが、事故防止に一番重要です。

・硬貨や小さなおもちゃ、ピアスなどの装飾品、ガラスや針などの尖ったものは、吐かせずに病院に行きましょう。タン電池や磁石を飲み込んでしまうと胃に穴があくこともあります。
この場合も無理に吐かせずに受診しましょう。

・異物誤飲の対処法が判らない場合には、日本中毒情報センター中毒110番に電話をすると、タバコ、化学物質、医薬品などの誤飲による中毒事故発生に限定して応急手当や受診の必要性を薬剤師がアドバイスしてくれます。

日本中毒情報センター中毒110番 (情報提供料は無料、通話料のみ患者負担)

  @ つくば:029-852-9999(365日9:00〜21:00対応)

  A 大阪:072-727-2499(365日対応24時間対応)

  B タバコ専用電話:072-726-9922(365日対応24時間対応、テープ方式)

C 家庭でおこなう対処法
・子どもがのどにものを詰まらせ、声が出ない状態で首を押さえ苦しそうにしており、唇の色や顔色が紫色になってきた場合には119番通報し、救急車がくるまでの間、異物をとりだせるように胸部突き上げ法・背部叩打法をこころみてみましょう。

・1歳未満の乳児の場合、異物除去のために「胸部突き上げ法」と「背部巧打法」を数回ずつ交互に行います。
意識がない場合には心肺蘇生法も組み合わせてみましょう。

・胸部突き上げ法は、片手で赤ちゃんの身体を支え手のひらで後頭部をしっかり押さえ支え、心肺蘇生法の胸部圧迫と同じやり方で、2本の指を乳児の胸骨の上に置き約3秒間隔で5回強く圧迫します。咳が誘発されて口腔内に異物が吐き出されてくるかもしれません。

・背部叩打法は、赤ちゃんを裏返しの姿勢に支え直し、片手で身体を支え、手のひらで顎をしっかり支え、もう一方の手のひらの付け根で背中を何度か叩きます。
胸部突き上げ法と背部叩打法を数回ずつ繰り返してみましょう。

・1歳以上の幼児の場合には、腹部突き上げ法を行います。
子どもの背後から両腕を回し子どものみぞおちの下で片方の手を握り拳にして、その手で腹部を上の方へ圧迫してみます。

(3)  転倒・転落事故

子どもは危険を察知し回避する能力が低いため、ものにぶつかったり、転んだり、転落したり、ケガをする機会が多いという特徴があります。
親がちょっと目を放した瞬間に乳幼児が階段やベット、椅子やソファーなどから転落することがよくあります。

@ 全身状態の観察ポイント
何時何処でどの部分をどんな時にどの様にしてケガをしたのか状況を早く把握しましょう。
転倒後は打撲した部分の腫れや皮下出血の有無、痙攣や運動障害の有無などに気をつけて観察する必要があります。

A 直ちに救急受診したほうがよい場合
急に打った部位が腫れていたがる場合、捻挫や骨折の可能性があります。
お腹を打ち、その後何度も吐き顔色が悪くなり、痛みが強い場合、胸を打ち、息苦しい、咳きこみが続く、血痰がでる、痛みで深呼吸が出来ない、傷を押さえても20~30分たっても出血が止まらなかったり、拍動性の出血がある場合は緊急受診をしましょう。

B  すこし様子を見て救急受診の必要性を判断してよい場合
ケガをした部分の痛みがなく、元気で出血も止まっていれば、しばらく様子をみて救急受診の必要性を判断しても良いでしょう。

C  家庭で看護するポイント
・打ったところを冷やし、安静にする。

・腹部を打ったときは衣服を緩め楽な姿勢にする。

・胸部を打ったときは呼吸が楽な姿勢(膝を胸につける、壁により掛からせる)をとる。

・出血しているときは清潔な布やガーゼでしっかり圧迫し止血させましょう。

・ベビーベットの柵は必ずあげて転落しないようにする、
・ 階段には乳幼児の移動を防止する柵を設ける、
・ 風呂場で転倒しないようなマットを設置する、
・ ベットやソファーの上で遊ばせない
・ 踏み台になるようなものをベランダや窓の側に置かない、
・ 子どもを乗せたまま自転車から離れない
などに気を遣い転倒転落の防止に気をつけましょう。

(4)  やけど(熱傷)

家庭では熱傷の原因になるものがたくさんあります。
乳幼児は、食卓やテーブル上におかれたコーヒーや茶、お椀などに手をかけひっくり返すことがよくあり、またテーブルクロスを引っ張り、その上の熱い煮物や飲み物をひっくり返し体中に熱湯をあびる場合もあります。

また台所で調理中の煮物や熱湯をあびたり、炊飯器やポットから吹き出る蒸気でやけどをしたり、アイロンやストーブに触れやけどを負う場合もあります。
家庭では子どもがやけどを負うような原因を可能な限りなくするような日頃の注意が大切です。

@ 冷水での受傷部位の冷却
・やけどをした場合、熱傷の進行を止め、痛みを和らげるため、少なくとも10分程度は衣服の上からでも流水やシャワーで患部を冷やしましょう。
冷やした後、衣服を慎重に脱がせ、痛みが残っている場合には再び冷却します。

・衣服が皮膚に張り付いている部分は無理に剥がさず、はさみで衣類を切り取り、皮膚を剥がさないように気をつけましょう。

・浮腫(むくみ、すいほう)がでる前に受傷部位の衣服を除去するようにしましょう。

・受傷部位に直接手で触れたり水疱を破ったりせず、また冷やすときは低体温を起こすような冷たい水を使用しないように気をつけましょう。

A 受傷部位の保護と全身状態の観察
・感染を防ぐため、患部を清潔な布でおおい保護しましょう。
手や足の受傷部位の保護には清潔なビニールや台所用ラップを用いると感染防止に役立ちます。

・固定はビニールの上から絆創膏や包帯で固定します。
油や軟膏を塗らない、低体温にならないように保温に気をつけます。

・飲み物や食べ物を与えないようにし、ショックの徴候を見逃さないように注意する必要があります。

B 直ちに受診した方が良い場合
・水疱ができたり皮がむけたりした部分が広範囲におよぶ熱傷は重篤でショック状態になる可能性が高いので、緊急に専門医療機関を受診する必要があります。

・やけどの重症度は、受傷部分の皮膚が赤い場合は1度、水ぶくれができている場合は2度、ひふが白くなったり黒く変色している場合は3度の火傷と考え、火事などで熱い空気の中にいたことで気道や目の熱傷、爆発などによる顔面や気道の熱傷、 化学薬品による熱傷などの場合も、緊急受診が必要です。

(5)  熱中症

・高温の炎天下では大量の汗で体の水分や塩分が失われ体温調節が上手く出来なくなります。
こどもは体温調節機能が未熟なため大人以上に熱中症になることがあります。
熱中症は屋外だけでなく暑い室内でもおこることがあります。
冷やし続けることが必要です。

・こまめな水分補給と温度管理が重要です。
熱中症予防にはこまめな水分補給、気温と温度に合わせた衣類の洗濯、こまめに日陰で休息する、良く尿が出ているか尿量や回数に気をつける、車内や室内は適切なクーら使用を行う、赤ちゃんを日向に長時間置かないなどの対応が必要である。

・熱中症に症状は,軽い眩暈や頭痛がある場合は軽い熱中症の可能性があり衣類を緩め涼しいところで頭を低くした状態で寝かせる。
塩分や糖分が含まれるイオン飲料水をこまめに少量ずつ与えましょう。

・全身がだるく意識がはっきりしないなどの症状があれば熱疲労かもしれません。
重症化しないようにイオン飲料水のこまめに少しずつ与え、冷たいぬれタオルでふく風を送るクーラーの効いた部屋に寝かせるなど、積極的に体を冷やす対応をとりましょう。
同時に緊急受診も考えましょう。

・40度を超える体温、意識障害やけいれん汗が出なくなるなどの症状がある場合は生命の危険がある熱射病の恐れがあります、救急車を呼び緊急受診をしましょう



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