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ひとの免疫システムが、特定の食べ物に対して抗原特異的に過剰な免疫反応をひきおこし、からだにとって不利益な症状を引きおこす現象を食物アレルギーといいます。

1 食物アレルギーの症状

食物アレルギーの場合には、以下の様な症状が認められます。

(1)  皮膚症状

・かゆみ(掻痒感)
・ じんましん
・ 発赤
・湿疹
・血管性浮腫

(2)  粘膜症状

眼症状:結膜の充血、眼瞼のむくみ(浮腫)、掻痒感、なみだ眼(流涙)

鼻症状:くしゃみ、鼻汁、鼻閉

口腔咽頭症状:口腔・口唇・舌の違和感・腫脹、のど(咽頭)の痒み、いがいが感

(3) 消化器症状

腹痛、悪心、嘔吐、下痢、血便

(4) 呼吸器症状

のどが締め付けられる感じ(喉頭絞扼感)、喉頭浮腫、こえがれ(嗄声) 咳嗽、呼吸困難

(5) 全身性症状

アナフィラキシー:上記症状(皮膚・粘膜症状や呼吸器症状など)

アナフィラキシーショック:頻脈、ぐったり(虚脱状態)意識障害、血圧低下

 

2 食物アレルギーのタイプ

(1) 新生児や乳児の消化管アレルギー

新生児期や乳児期の赤ちゃんに牛乳から作られた乳児用調製粉乳を使用する際に発生することがあり、嘔吐や下痢、血便などの消化器症状を引きおこします。

(2)  食物アレルギーが関与する乳児アトピー性皮膚炎

乳児期にタマゴや牛乳、小麦、大豆などの食品をとることにより引きおこされる乳児アトピー性皮膚炎で、原因食品が湿疹などの症状の増悪に関係したり、食物摂取で即時型症状を伴う場合もあります。

慢性の下痢症などの消化器症状や低蛋白血症や電解質異常を合併する場合もあります。
ただし全てのアトピー性皮膚炎に食物が関与しているわけではありません。

(3) 即時型症状(じんましん、アナフィラキシーなど)

乳児期から成人期までに起き、ふつう食品を食べてから2時間以内にアレルギー反応が出現します。

乳児期から幼児期には鶏卵、牛乳、小麦、そば、魚肉、ピーナッツなどで起こしやすく、学童や成人では甲殻類、魚類、小麦、果物、そば、ピーナッツなどで起こす場合があります。

(4) 食物依存性運動誘発アナフィラキシー

食物アレルギーを起こす原因食物をとった後、運動をしたときにアナフィラキシー反応を引きおこす場合があります。

このような状態にならないようにするため原因食品を摂取してから2〜4時間は運動をさしひかえましょう。 ただし原因食品をとらなければ運動は可能です。

また非ステロイド性抗炎症薬や食品添加物(サリチル酸)やアルコール飲料を飲んだり、入浴したりすると症状が増強することがあります。

小麦加水分解物含有石けん「茶のしずく」を使用しておきる小麦アレルギーで小麦依存性運動誘発アナフィラキシーという健康被害が発生したことが報告されています。

(5) 口腔アレルギー症候群

IgE抗体が口唇や口腔粘膜で果物・野菜などの成分と交差反応することにより、食物を摂取してから5分程度でじんましんを引きおこします。

花粉症に合併することが多く、ハンノキ、シラカバはバラ科果物(リンゴ、モモ、サクランボなど)、イネ科とブタクサはウリ科果物(メロン、スイカなど)ヨモギはセリ科野菜(セロリ、ニンジンなど)と交差反応を起こすことがあります。

またラテックスアレルギーではアボガド、クリ、バナナなどと交差反応を起こしアナフィラキシー症状を引きおこす場合があります。

 

3 食物アレルギーの特徴

(1) 頻度

乳児では約10%、3歳児では約5%、幼児が5.1%、学童以降が1.5〜4.5%程度

(2)  原因食品

乳児・幼児期早期の即時型食物アレルギーの主な原因は鶏卵、乳製品、小麦などであるが、3歳頃までに50%、学童期には80〜90%が食べても症状を示さなくなり、耐性を獲得します。

学童期から成人で新たに即時型食物アレルギーを起こす場合の原因食品は、甲殻類(カニ、エビなど)小麦、果物、魚類、そば、ピーナッツなどが多く、耐性獲得は乳幼児期発症に比べて低くなっています。

 

4 食物アレルギーの診断

・食後2時間くらいまでの間に、上記2に示した食物アレルギーを疑わせる症状が認められる場合にはアレルゲン検査を受け、原因食物を確認してもらいましょう。

・検査には血液検査、皮膚テスト、食物除去試験、食物経口負荷試験などがあります。

(1) 血液検査

食物アレルギーの原因物質と考えられる食物に対して特異的に反応する抗原特異的IgE抗体をイムノキャップ法あるいはアラスタット3gAllergyで測定する検査法が最もよく利用されています。

血中抗原特異的IgE抗体が陽性であることは、その抗原に感作されていることを意味しますが、食物アレルギー症状を引きおこしている原因であることを意味しているわけではありません。

確認するには、除去試験や食物負荷試験で確認する必要があります。

(2)  皮膚テスト

プリックテストは皮膚に抗原を載せて皮膚をひっかく方法であり、血中抗原特異的IgE抗体検査と同様に感度は高いけれども、食物経口負荷試験に比較すれば特異性は低くなります。

血中抗原特異的IgE検査で検出できない乳児食物アレルギーの原因抗原の早期診断でプリックテストは役立ちます。
また口腔アレルギー症候群においてもプリックテストは有用であります(原因食物そのものを皮膚に滴下してプリックテストを行う。例えば果物をプリック針で刺してからプリックする)。

皮内テストはショックの危険性や偽陽性率が高いので通常は使用しない。

(3)  食物除去試験

食物除去試験は主に乳児アトピー性皮膚炎で食物アレルギーの関与が疑しい場合に実施します。

疑わしい原因食物を1〜2週間完全除去し臨床症状の改善が得られるかどうかを観察します。

食物日誌により除去を行った者と摂取した食品の確認を行います。

(4)  食物経口負荷試験

アナフィラキシー反応などへの豊富な経験を有する専門医師のいる施設で行うべきで、原因抗原の診断、耐性獲得の判断、リスクアセスメントなどを目的とします。

低年齢児ではオープン法で行い、年長児あるいは成人ではブラインド法を考慮、耐性獲得の判断のための負荷試験は出来るだけ低年齢から施行し、食べられる食品を増やしたり早期に除去解除が出来るよう計画します。

体調の悪いときは行いません。(感冒、下痢、疲労時など)

事前にアトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー症状を充分コントロールして誘発症状の判断が可能な状態で行います。

抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などは閾値を上げる可能性があるため原則服用を中止して行います。

原因食物の診断が難しい場合や原因不明のアナフィラキシーを繰り返す場合、遷延する食物アレルギーに対する診断の見直しや栄養指導が必要な場合、耐性獲得の確認やリスクアセスメントの為の食物経口負荷試験が必要な場合、アナフィラキシー症例や血中抗原特異的IgE抗体が高値で明かなアナフィラキシーのエピソードのある例では、誘発リスクが高いため専門施設への紹介が必要になります。



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